【看護師のキャリア選択】病院以外での活躍情報と平均収入の比較ガイド

看護師のみなさん、病院病棟勤務は大変ですよね。不規則な勤務シフト、命の守るシビアな現場での精神的ストレス、何気に肉体労働、そして職場の人間関係。定年まで病院病棟看護師として勤務し続けるハードルはかなり高いと思われます。日本看護協会の報告(引用:20230301_nl04.pdf (nurse.or.jp)によると、看護師の離職率は11.6%であると報告されています。このことから、看護師の約10人に1人は転職経験をしていると考えられ、看護師にとって転職は一般的なキャリア形成といえます。

しかし看護師が活躍できる場所は病院病棟のみではなく選択肢が多く、病院勤務以外の道も開かれています。この記事ではキャリアの選択肢を模索する看護師のために、病院以外での活躍方法と平均収入を比較したガイドをご紹介します。自分の専門性やライフスタイルに合わせて、さまざまな選択肢を検討してみましょう。

記事作成者:ダディー(保健師・看護師・介護支援専門員・看護学修士)
看護師歴17年目。急性期外科病棟、看護教員を経て、現在は地域包括支援センターで保健師をしています。看護学修士。自分自身も病棟勤務に馴染めず悩み転職を繰り返した経験があります。
自分の転職経験や、病院の中から外から色んな看護師さんと出会った経験をもとにできるだけリアルな声を伝える記事を心がけています。

結論は以下の通りです。

職名仕事の内容平均的な年収
訪問看護患者様の自宅を訪問して看護ケアを提供する400~500万円
保健室の先生学校の保健室で生徒や教職員の健康管理400~500万円
介護保険施設介護保険入所施設やデイサービス等での看護業務400~500万円
一般企業企業内での健康管理や予防プログラムの実施400~600万円
行政保健師母子保健業務。高齢者健康診断後の訪問指導等400~500万円
地域包括支援センター地域での高齢者福祉・介護予防業務。介護予防ケアマネジメント業務400~500万円
看護学校の教員看護学生に臨床スキルや理論知識を教える400~500万円
看護系大学の教員学術研究と教育活動。看護学部生、大学院生の指導。500~800万円
治験コーディネーター臨床治験の実施における医師や研究チームと協力して患者様のケアを行う400~500万円
※平均的な年収は地域によって差があります。

順番に一つずつ解説していきます。

訪問看護

平均収入: 約400万円から500万円の範囲。

仕事の特徴: 患者様の自宅を訪問し、医師の指示の元に看護ケアを提供します。1回の訪問時間が30分から60分程度です。柔軟なスケジュールと自律的な業務が特徴です。また、ケアマネジャーや介護保険事業所等との連携をとる場面が多々あり、在宅で活動する医療職として他分野から非常に頼られる仕事です。勤務先のほとんどは訪問看護ステーションとなります。ステーションによっては独自の訪問看護サービスを提供する会社も存在します。

ステーションの経営は看護職が可能なので、自分で訪問看護ステーションを開業し、経営者となっている看護師も多くいますよ。

保健室の先生

平均収入: 約400万円から500万円の範囲。

特徴: 小学校から大学まで、いわゆる保健室で、生徒や教職員の健康管理を行います。学校のカレンダーに基づいた仕事スケジュールがあり、夏休みや冬休みなどで長期休暇が取りやすいことが特徴です。教育環境での働きが好きな方に向いています。 学校での怪我や突然の病気に対処し、応急処置を提供します。カットや打撲、骨折などの初期処置、エピペンの実施を行い、病気の症状を評価して適切な対応を取ります。健康教育では健康に関する教育プログラムを提供し、生徒が健康的な生活習慣を身につける手助けをします。栄養指導やストレス管理、性教育など、幅広い健康トピックについて情報を提供します。また、生徒の心理的な問題やストレスに対処し、心の健康を支援します。カウンセリングを行い、生徒が学業や社会生活で成功するためのサポートを提供します。

お住いの自治体によりますが、学校保健室で勤務するにあたり、養護教諭の資格は必須ではありません。看護師の資格のみで勤務している保健室の先生も多くいらっしゃいますよ。

介護保険事業所(入所施設・デイサービス)

平均収入: 約450万円から500万円の範囲。

特徴: 高齢者や障がいを持つ人々のケアを提供する施設で、日々の生活サポートや医療ケアを行います。代表的な勤務場所は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設等の入所施設や、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)の事業所等です。施設内で唯一の医療職となるため、身体介護より利用者さんに必要な医療ケアを提供することが多いです。例えば内服薬の管理、インシュリン注射、ストーマの装具交換・排泄物の除去、導尿、簡単な創処置などです。病院よりも一人一人の利用者さんと比較的ゆっくりと関わることができるので、利用者さんと感情的なつながりを築きやすく、関係性を深めることができる職場です。

一般企業

平均収入: 約600万円から900万円の範囲。

特徴: 企業内での健康管理や予防プログラムの実施を担当します。企業内の保健室といった位置づけです。企業文化に貢献し、ビジネスと健康の両面でキャリアを築くことができます。業務内容は健康評価とスクリーニング、医療支援と処置、健康教育と予防行動です。健康評価とスクリーニングでは、従業員の健康状態を評価し、健康スクリーニングを行います。健康リスクの特定や早期発見を目的として、健康チェックや血圧測定、生活習慣の評価などを行います。医療支援と処置では、企業内での急病や怪我の応急処置や医療支援を行います。事故や救急状況に対処し、必要に応じて医師や救急サービスと連携して、従業員の健康状態を管理します。健康教育と予防活動では従業員に対して健康教育プログラムを提供し、生活習慣やストレス管理、栄養指導などの健康促進活動を行います。予防接種キャンペーンや健康フェアの企画・実施も担当します。

比較的規模が大きい企業に勤務することが多く、特に地方では求人数は少ない傾向にあるようです。

地域包括支援センター

平均収入: 約400万円から500万円の範囲。

特徴: 地域包括支援センターは、高齢者や障がいを持つ方々が地域で安心して生活できるよう支援する医療・介護・福祉の総合相談窓口です。面接を中心に相談受付を行い、地域の福祉や医療機関と連携して総合的なサポートを行います。地域の中心として、地域住民や関係機関と協力して地域全体の健康と福祉を支える重要な役割を果たしています。また、併せて介護保険で軽度の認定者(総合事業対象者・要支援1、2の認定者)に対する介護予防ケアマネジメント業務も行います。総合相談窓口としての対応と、ケアマネジメント業務(いわゆるケアマネ業務)の2つの大きな仕事を行います。自治体によっては、看護師資格だけを有している場合はケアマネジメント業務は対応しない場合があります。

画像引用:ほやねっと社 | 社会福祉法人新清会ホームページ (shinseikai-f.org)

保健師の資格がなくても、在宅医療や地域看護に関する経験が概ね3年程あれば働くことができます。地域包括支援センターの中心的な業務は相談対応です。多くの相談者の方や、様々な支援者など、新しい出会いが多く刺激的な仕事です。ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格がなくてもOKです。

看護学校の教員

平均収入: 約450万円から500万円の範囲。

特徴: 看護学校の教員は、看護学生に臨床スキルや理論知識を教える役割を担います。実習指導や授業の準備、評価などが主な業務です。臨床経験を生かして学生の教育に貢献し、看護の未来を担う人材の育成に携わることができます。

授業のカリキュラムが決まっているため、学生の長期休暇期間以外は休みにくい傾向にあります。
一方で学生の長期休暇中は、教員も1週間まとめて休みをとるなどしやすいです。

看護大学の教員

平均収入: 約500万円から900万円の範囲。

特徴: 看護系大学の教員は、学術研究と教育活動を両立させながら、看護学生や大学院生の指導を行います。臨床実践だけでなく、看護理論や研究方法論などの授業も担当します。また、研究活動や学術発表など、学問の発展に貢献することも重要な役割です。一般的に大学の教員は助教からスタートとなりますが、最近では助教のレベルで博士の学位を修了していることが求められています。大学教員になるまでの道のりは大変ですが、現場から生まれた「看護」を「看護学」に押し上げていく、あるいは看護学を学問としてより深化させていくことに関わることのできる非常に意義深い仕事です。また、教育職は、看護の知識や経験を生かして、次世代の看護師や研究者を育成する重要な役割を果たすことができるやりがいのある職業です。

最近では助教のレベルで博士の学位を修了していることが求められています。私立大学では修士で助教に着任できることもあります。

治験コーディネーター

平均年収:450万円から550万円の範囲。

特徴:治験コーディネーターの看護師は、臨床試験の実施において、医師や研究チームと協力して患者のケアを担当します。臨床試験のプロトコルに基づいて患者のスクリーニング、モニタリング、評価を行い、患者の安全性と福祉を保護します。治験コーディネーターの看護師は、患者との関係を構築し、臨床試験に参加することへの理解を促進します。また、患者に治験の目的や手順、リスクと利益について説明し、インフォームドコンセントを取得します。治験コーディネーターの看護師は、臨機応変に対応し、多くの患者や複数の試験プロトコルを同時に管理する能力が求められます。臨床治験では、厳しい病状にある患者様(ガン等)と関わる機会が多く、治験薬にすがる思いで臨床治験に臨まれている方も少なくありません。看護師としてそういった患者様へのケアを行うことも重要な役割となっています。

看護師のキャリア選択肢として、訪問看護、保健室の先生、介護保険施設、一般企業、地域包括支援センター、看護学校の教員、看護系大学の教員、治験コーディネーターの概要を紹介しました。「看護」は好きだけど、「病院」に慣れることができない。そんな看護師さんは少なくないと思います。自分のその一人でした。看護師が「看護」できる場所は多種多様で、働く場所の選択肢は非常に多いです。

是非自分にあった場所を見つけて、自分なりの歩き方で看護の道を進んでいってください。

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